ある日、私が店番をしていると、一人の老人が店に入ってきた。当時、不動産屋の店舗の前は、不動産広告を窓ガラスにべたべたと貼ってあるのが普通であった。私のいたその店も、多少、近代的にはなっていたものの、窓ガラスには不動産物件情報が貼ってあった。その老人は、店先の不動産情報をはがして、私に、「おい、この物件は、本当にあるのか?」と聞いてきた。何とも唐突で、変わった人だなと思いつつも、「ま、立ち話もなんですから、どうぞ、おかけになってください」と言って、カウンター席に座っていただいた。早速、その物件を取り扱っている不動産業者に確認を取り、まだ、その物件があることを伝えると、その老人は即座に、「じゃあ、くれ」と言った。「くれっ、と言われましても、この土地は2400万円、それに諸経費もかかりますから、結構、お金、かかりますよ」と、私もまだ新人の頃だったので、戸惑いつつも、経費を説明しようとすると、「そのくらいはわかっとる。金、払えばいいんだろう!」と不機嫌そうに言った。
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